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トランジットモールと密接な関係にあるのが、「コンパクトシティ」です。「コンパクトシティ」とはなにか、たとえば青森市のホームページでは、次のように説明しています(2018.5.15時点)。
Q1.コンパクトシティってなに?
A1.住まい、職場、学校、病院、遊び場などさまざまな「機能」を、都市の中心部にコンパクトに集めることで、自動車に頼らず、歩いて生活することのできるまちのことです。
コンパクトシティのまちづくり|青森市 |
コンパクトシティ政策
いまの日本の都市は、市街化調整区域などのさまざまな都市計画にも関わらず、無計画に全方位的に広がっているという印象があります。
少し前までのように、若い人が多く、自家用車が自由に使える状況であれば、むしろ住みやすいと言ってよい状態でしょう。しかし、人口の減少や高齢化の進展とともにそうも言ってはいられなくなりました。
それがはっきり現れたのが、「高齢者の自動者運転問題」です。買い物や病院通いのために運転を止められないお年寄りによる事故が多発しています。
その解決策として考えられた政策が、コンパクトシティです。少なくなってくる居住者を市の中心部などに集め、商店や病院などを歩いて回れる範囲に配置することで、車に頼らない生活を実現します。
もちろん、いくら人口が減るといっても、歩ける範囲に全員が集まれるほど少なくなるわけではありません。そこで、たとえば富山市では、中心部だけでなく市内を走る路面電車の沿線に人を集め、路面電車で移動できる街づくりを進めています。富山市では、それを団子(徒歩圏)と串(公共交通)と表現しています。
現状は
市街地が野放図に広がってしまった現状について、このままではまずいと考える人は多いでしょう。自治体にとって、住民が薄く広く分散していては、行政サービスのコストがかかりすぎるという切実な問題もあります。
そのため、コンパクトシティを目指すとしている自治体は多くあります。しかし、成功したという話はまだ聞きません。
もちろん、都市の構造を変えようという話ですから、5年や10年で結果が出るものではありませんが、総論賛成、各論反対というありがちな状況に陥り、先に進めなくなっているところが多いように感じます。
また、自治体は、本音ではコンパクトシティ化に積極的ではないという報道もあります。
「コンパクトシティーに逆行 自治体、郊外開発を黙認 インフラ負担減らず」より
人口減時代に向けたコンパクトな街づくりが進まない。住宅や商業・公共施設を中心部に誘導する計画を作った自治体が、郊外の開発案件すべてを事実上黙認している実態が日本経済新聞の調べで判明した。3割の市町は郊外開発の規制を緩めている。人口が減るのに生活拠点が拡散すると財政負担が膨らむ。都市の衰退を避けるため、より効果的に街を集約する制度が必要になってきた。出典:日本経済新聞 2018年4月21日朝刊
コンパクトシティを目指すためには、住居地域を徐々に狭くしていく必要がありますが、いま住んでいる人を強制的に引っ越しさせることはできません。
住み慣れたところから出たくないのは誰でも同じです。
新たに住む人についても、自動車があれば不便はありませんので、地価の高い中心部より郊外に住もうとする人が多くなるのはやむを得ません。
歳をとって自動車の運転ができなくなるのは、若い人にとってはずっと先の話です。
しかし、このまま何もしなければ、困るのは最後は住民自身です。
不動産の問題を扱った本にコンパクトシティについて、次のような記述がありました。
進む「街のコンパクト化」
こうした事態を踏まえ、国は「コンパクトシティ」の概念を打ち出し、「集まって住む」を政策的にも推し進めようとしています。
都市中心部に集まって住む取り組みで先行している富山市は、全国に先駆けコンパクトシティの概念を採り入れ、遠方の居住者が中心部に引っ越す場合に補助金を支給したり、路面電車を走らせるなど、モデル都市として国の助成も受けながら、中心部に人を集める政策を展開しています。人が集まる一部の地域の地価は下がらず、上昇する地点もみられます。かたやそれ以外の多くの地域では、地価が下がり続けています。
この本は、トランジットモールを扱うものではなく、タイトルでわかるとおり不動産の問題を取り上げたものです。これから日本は、人口減少、高齢化が進んでいきます。人口が減っていけば、当然、地価は下がります。そう単純なものではないようですが、この本では、これから不動産(土地、建物)が価値のある、なしでどんどん差が開いていくことと、その対策についてわかりやすく書いてあります。
管理人はトランジットモールからコンパクトシティの問題に入っていますが、この本は不動産の価値の変化という観点からコンパクトシティについて触れています。
これからの日本は、コンパクトシティを政策として進めていかないと立ち行かなくなるという危機感があります。不動産の観点から見ると、歩行者が歩きやすいかどうかというレベルとはまた異なる問題点がわかります。
おわりに
トランジットモールは、コンパクトシティに不可欠の要素ではありません。
しかし、コンパクトシティでは、「職場、学校、病院、遊び場などさまざまな『機能』」が、歩ける範囲に集められます。
その範囲を「トランジットモール」とすれば、快適な環境になるだろうと、管理人は考えています。