イギリス マンチェスター(Manchester)

目次

街の中心にある公園(ピカデリーガーデン)の周辺がトランジットモールになっています。トランジットモールの中をトラムが通り、東西にほぼトラム1駅間分(500mくらい?)の広さがあります。

マンチェスターのトランジットモール

上の写真は、トラムの停留所からトランジットモールを撮ったものです。管理人の印象としては、中央から右が線路を含むトランジットモールで、左が車道というものでしたが、車道もバスしか通っていないようで、もしかすると全体がトランジットモールかもしれません。ただし、道路の色分けでもわかりますが、歩道と線路だけであれば歩行者が自由に歩けますが、バスだけであったとしても車道があると、自由に歩くというわけにはいきません。

トランジットモールの中心部

上の写真は、その上の写真から右に少し進んだところです。電車が来ていても、あまり気にせず歩いている様子がわかります。

マンチェスターとは

イングランド北部の中心都市です。イギリスの首都であるロンドンからは鉄道で2時間あまり。目立った観光地もないので、日本から観光で訪れる人はあまりいないと思いますが、サッカーのマンチェスターユナイテッドの本拠地であるため、サッカーファンらしい日本人のグループは何組か見かけました。

既存の鉄道網の活用

マンチェスターも、かつては他の都市と同様、自動車があふれ、中心街から人がいなくなって、街の空洞化が大問題となっていたそうです。それを解決する方策として、それまで街の端が終点だった鉄道を街の中まで伸ばし、同時に街中をトランジットモールにしました。

モール内に既存のサイズの鉄道を走らせるわけにはいかなかったので、鉄道そのものを、より小型のトラムに変えたそうです。それによって、中心街に人が戻り、街の空洞化が解決しました。すでにある鉄道の施設をうまく活用したため、低コストで問題の解決が図れた事例でしょう。

「低床車」を使わずにバリアフリーを実現

マンチェスターのトラムはいわゆる「低床車」ではありません。既存の鉄道施設を転用したため、郊外では従来からあった駅のホームを使って乗り降りします。そのため、床の高さは普通の鉄道と同じです。一般の路面電車のように、地上すれすれの高さから乗り降りすることはできません。

したがって、モール内では、一般的な路面電車の停留所よりも高さのある乗り場が作られています。路面よりかなり高くなっているため「モールに浮かぶ島」という雰囲気があります。バリアフリーで端がスロープになっているため、ホームの長さもけっこうあります。しかし、モールに十分な広さがあるため、通行の邪魔という印象はありません。自動車が必要とするスペースに比べれば、トラムの線路や停留所のスペースは小さいということだろうと思います。

自動的に上下する仕切り

トランジットモールには、当然、内と外の境界があります。単なる歩行者天国であれば、自動車などが入ってこられないような仕切りをつければ済むでしょうが、トランジットモールには路面電車やバスなどの公共交通機関が入ります。バスを通せるようにすれば、当然、乗用車も入れます。標識だけで自家用車の進入を阻止するのは、なかなか難しいのが現状です。実際に、姫路で設定されているトランジットモールには、意図的かどうかはわかりませんが、自家用車がかなりの頻度で入ってきていました。

次のような仕切りで、境界を完全に区切ってしまえば、自動車は進入できませんが、同時にバスなども入れなくなります。消防車や救急車などの緊急車両の通行まで不可能になると、不便という問題ではすまなくなります。

ボラード

このように、歩道と車道を分ける仕切りのことを「ボラード」と言いますが、一般に知られている名前ではないでしょう。 ヨーロッパのトランジットモールでも、ボラードで区切られているところは多くはありません。そのため、間違って入ってきたらしい車を見ることもありました。そういう車は、途中でおかしいと気づくようで、挙動が不審になるので見当がつきます。必ずスピードを落とし、出て行こうとします。周りの歩行者も暖かく見守っています。

しかし、トランジットモールの境界に、許可された車両だけを通せるような仕組みがあれば、問題は解決します。次の動画は、管理人がマンチェスターのトランジットモールの境界で撮影したものです。音声はありません。動画が重かったら、申し訳ありません。

バスが近づくと、仕切りが自動的に下がり、通り過ぎると上がっています。バスの中から操作しているのか、近づくと自動的に動くのかはわかりませんが、仕切りの動作はスムーズでバスの運行を妨げていないことがわかります。おそらく、消防車や救急車などの緊急車両も、このシステムでトランジットモール内に入れるのだろうと思います。

ある程度コストはかかるでしょうが、いまどき、この程度のシステムを導入することは難しくないのではないでしょうか。緊急車両を通すために、境界に人が常駐するのはとても無理です。それがネックになって、トランジットモールの導入が見送られているケースもあると思います。いつか国内でも、このようなボラードを見てみたいと思います。

日本でも参考に

マンチェスターではすでにある鉄道の設備を活用して街中にトランジットモールを設け、トラムを走らせました。日本には充実した鉄道網があり、しかも存続の危機にある路線が少なくありません。中心街の空洞化も深刻です。既存の鉄道を再生する方策として、そして中心市街地を活性化させる方策として、マンチェスターの事例が参考になるのではないでしょうか。

(2012年3月訪問)

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