最終更新日 2023年8月30日
最近、ニュースなどでクレジットカードの「タッチ決済」という言葉を聞くことが多くなりました。
クレジットカードを使って支払いをするとき、通常であれば、ICチップや磁気ストライプを読み込ませます。しかし、「タッチ決済」では、文字通り、カードをタッチするだけです。Suicaのような電子マネーと同じような支払方法で、ずっと速く支払いが終わります。
日本クレジット協会のサイトでは、次のように説明しています。
●タッチ決済とはどのような決済方法?
国際ブランドが展開している非接触型の決済のことです。
国際ブランドによっては「コンタクトレス」や「Contactless」と呼ばれています。
決済用端末に「タッチ決済」対応のカードやスマートフォン等のデバイスを”タッチ”するだけで決済が完了しスピーディな決済が可能です。
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タッチ決済について|日本クレジット協会 |
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ここでも、「スピーディな決済」を強調しています。
※「コンタクトレス決済」という言い方もありますが、この記事では「タッチ決済」を使います。
タッチ決済が使えるカード
「クレジットカードのタッチ決済」と説明されることが多い状況ですが、
- クレジットカード
- デビットカード
- プリペイドカード
が対象です。また、これらの機能を搭載したスマートフォンでも利用できます。
ただし、これらのカードがすべて利用できるわけではありません。券面に次のようなマークが付いているカードが対象になります。
このマークは、「タッチ決済対応マーク」または「リップルマーク」といいます。
お持ちのカードにこのマークが付いていて、VISA、JCBといったブランドが対象になっていれば、タッチ決済が利用できます。
タッチ決済はどんどん普及していますので、いまお持ちのカードにマークが付いていなくても、次の更新時に付いてくる可能性があります。更新を待たなくてもすぐに取り替えてくれる場合もありますので、気になる方は、有料か無料かも含めて、カード会社に問い合わせてみることをおすすめします。
公共交通機関でのタッチ決済
現在、タッチ決済は商店だけでなく、電車やバスなどの公共交通機関にも広がってきています。
次の画像は、長野県の長電バスです。
最初は、VISAから始まったのでVISAのみのデザインでしたが、次のようなデザインも追加されました。
この記事を書いている時点では、長電バスの複数の路線がVISA、JCB、American Expressの3種類のカードのタッチ決済に対応しています。
鉄道では、関西の南海電鉄が先行しています。南海電鉄では、いくつかの駅に次のようなタッチ決済対応の改札機があります。
タッチ決済のできる改札機は限られていますので、誘導も派手です。
また、通常の改札機の横にタッチ決済用の装置を付けたタイプもあります。
南海電鉄グループの泉北高速鉄道では、全駅で利用可能です。
福岡市地下鉄でも全駅で使用できます。こちらの改札機も派手です。
私も実際に使ってみました。Suicaなどの交通系ICカードに比べて処理が遅いといわれていますが、それほど遅いとは感じませんでした。そう言われればそうかな、という程度です。ただし、ラッシュ時間帯であれば、遅いと感じたかもしれません。
タッチ決済が使える公共交通機関
この記事を書いている時点(2023.8.30)で、(私が調べた限りの)タッチ決済を利用できる全国の公共交通機関は、次のとおりです。
まず、電車(鉄道)。
交通機関 | 対象路線 | 対象ブランド | 備考 |
江ノ電 | 全線全駅 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover(他のブランドにも対応予定) | 2023年4月15日から、全線全駅で利用できるようになりました。 |
長良川鉄道 | 全線全駅 | VISA | |
京都丹後鉄道 | 快速・普通列車 | VISA | ※特急列車は自由席を含めご乗車できません。また、一部の快速・普通列車においてもご利用いただけない列車があります。 |
南海電鉄 | なんば駅・関西空港駅など23駅 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover | 2023年4月20日から、VISAに加え、JCB、American Express、Diners、Discoverに対応 |
泉北高速鉄道 | 全線全駅 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover | 2023年4月20日から、VISAに加え、JCB、American Express、Diners、Discoverに対応 |
JR九州 | 鹿児島本線:門司港駅~久留米駅までの全駅(49駅) 香椎線:海ノ中道駅(1駅) |
VISA、JCB、American Express | 2023年7月12日から、対象駅を5駅から50駅に拡大 実証実験中(2024年3月31日まで(予定)) |
西日本鉄道 | 西鉄福岡(天神)、薬院、大橋、太宰府、西鉄柳川 | VISA(他のブランドにも対応予定) | 実証実験中(2024年3月31日まで(予定)) |
福岡市地下鉄 | 全線全駅 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover、銀聯 | 実証実験中(2024年3月31日まで(予定)) |
熊本市電 | 全車両 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover | 2023年4月25日から、全車両に拡大し、VISAに加え、JCB、American Express、Diners、Discoverに対応 |
鹿児島市電 | 全車両 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover | 実証実験中(2024年3月31日まで(予定)) |


次に、バス。
交通機関 | 対象路線 | 対象ブランド | 備考 |
北都交通 | 空港連絡バスの全系統路線(都心・大谷地・円山・桑園・真駒内・丘珠) | VISA、JCB、American Express、Diners、Discover | |
北海道バス・千歳相互観光バス・エルム観光バス(共同運行) | 北海道ボールパークFビレッジ発着のシャトルバス | VISA | |
岩手県北バス | 盛岡-宮古線など高速バス3路線 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover | |
福島交通 | 郡山-福島空港線、福島-仙台線など高速バス6路線 | VISA、JCB、American Express | |
会津バス | 会津若松・福島-仙台空港線など高速バス3路線、路線バス(ハイカラさん、あかべえ) | VISA、JCB、American Express | |
茨城交通 | 勝田・東海-東京線など高速バス2路線 | VISA | |
なの花交通 | 佐倉・四街道-東京八重洲線 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover | |
西武バス | 空港連絡バス(所沢羽田線・川越羽田線・所沢成田線) | VISA | 実証実験中 |
国際興業バス | 空港連絡バス(池袋羽田線・浦和羽田線) | VISA(他のブランドにも対応予定) | 実証実験中 |
西東京バス | 空港連絡バス(青梅・羽村・福生-羽田空港線 ※空港に向かう便のみ) | VISA(他のブランドにも対応予定) | 実証実験中 |
京急バス | 空港バス(羽田空港-横浜駅(YCAT)線) 空港バス(山下公園・みなとみらい地区・赤レンガ倉庫発 ※空港に向かう便のみ) |
VISA、JCB(他のブランドにも対応予定) | 2023年7月1日から、VISAに加え、JCBに対応 |
東急トランセ・京急バス(共同運行) | 羽田空港リムジンバス(大崎駅・武蔵小山駅・大井町駅・品川シーサイド駅発 ※空港に向かう便のみ) | VISA、JCB(他のブランドにも対応予定) | 2023年7月1日から、VISAに加え、JCBに対応 |
江ノ電バス・京急バス(共同運行) | 羽田空港リムジンバス(鎌倉駅・藤沢駅・大船駅発 ※空港に向かう便のみ) | VISA、JCB(他のブランドにも対応予定) | 2023年7月1日から、VISAに加え、JCBに対応 |
新潟交通、越後交通、頚城自動車、蒲原鉄道、アイ・ケーアライアンス | 新潟県内高速バス・ときライナー(長岡線・上越線・柏崎線・糸魚川線・十日町線・東三条線・五泉村松線・燕線) | VISA、JCB | 2023年5月31日から運用開始 |
長電バス | 長野-志賀高原線など急行バス3路線 路線バス(奥志賀高原線、白根火山線) |
急行バス:VISA、JCB、American Express 路線バス:VISA |
|
アルピコ交通 | 長野-松本線など高速・特急バス4路線 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover | |
富山地鉄 | 富山空港線(直行バス) | VISA・JCB | |
まいどはやバス(富山市民プラザ) | VISA・JCB(他のブランドにも対応予定) | 実証実験(2023年4月3日より1年間) | |
京福バス | 小松空港連絡バス、永平寺ライナー、一乗谷東郷線、一乗谷永平寺連絡バス | VISA | |
南海りんかんバス | 高野山内 | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover | 2023年4月20日から、VISAに加え、JCB、American Express、Diners、Discoverに対応 |
神姫バス | シティーループ、ポートループ | VISA | |
広島電鉄、広島バス、広島交通、芸陽バス、中国ジェイアールバス | 広島空港リムジンバス | VISA、JCB | 2023年4月26日から運用開始 |
産交バス | 阿蘇くまもと空港リムジンバス、熊本駅直行便(空港発のみ)、阿蘇くまもと空港直行便、熊本-高森 快速たかもり号 | VISA(他のブランドにも対応予定) | |
南国交通 | 鹿児島空港連絡バス(鹿児島市内、川内、宮之城・出水・阿久根、栗野・大口・水俣) | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover | 2023年4月27日から、VISAに加え、JCB、American Express、Diners、Discoverに対応 |
西表島交通 | 路線バス | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover(他のブランドにも対応予定) | 2023年4月27日から運用開始 |
最後に、その他の交通機関。
交通機関 | 対象路線 | 対象ブランド | 備考 |
箱根ロープウェイ | - | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover、銀聯(他のブランドにも対応予定) | 2023年8月2日から運用開始 |
箱根海賊船 | - | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover、銀聯(他のブランドにも対応予定) | 2023年8月2日から運用開始 |
南海フェリー | - | VISA、JCB、American Express、Diners Club、Discover |
上の一覧は、あくまでも私が調べた範囲内のものです。タッチ決済は、実証実験の形で急速に進んでいます。申し訳ありませんが、おそらく抜けがあるだろうと思います。実験の終了に気付いていないということもあるかもしれません。実際にご利用になるときには、公式サイトなどで確認するようお願いします。
※2023年8月30日から東急田園都市線・東急世田谷線・東急バス全線でタッチ決済が開始されたという報道があります。しかし、現時点では、東急電鉄のデジタル乗車券サービス「Q SKIP」のサービスの一部であり、タッチ決済だけで乗降と支払いが完結できるわけではありません。ご注意ください。
おわりに
日本の公共交通機関のキャッシュレス決済は、Suicaなどの交通系ICカードで進んできました。しかし、日本の交通系ICカードは日本独自の規格で海外では利用できません。海外からの観光客が電車やバスでキャッシュレス決済を利用するためには、日本の交通系ICカードを買う必要があります。
実際、私もロンドンで現地の交通系ICカード「オイスターカード(oyster)」を買って使いましたが、帰ってきてしまえば日本では使えません。払い戻しの手続きも面倒です。
日本に来る外国人観光客にとっても事情は同じです。しかし、クレジットカードであれば、ほぼ誰でも持っています。クレジットカードで電車やバスに乗れるのであれば、そちらを使うほうが便利です。
そのため、交通機関のタッチ決済はインバウンド需要のある空港路線や観光路線を中心に広がっています。先駆けである南海電鉄は関西国際空港に乗り入れています。2023年4月15日から全駅での使用が始まった江ノ島電鉄や2023年8月2日から使用が始まった小田急箱根グループの箱根ロープウェイ・箱根海賊船は、海外からの観光客に人気の観光地をめぐっています。
空港のバス路線にも徐々に広がりつつあります。次の画像は、西武バスの所沢駅東口案内所のものです。

交通系ICカードとタッチ決済がこれからどう棲み分けるのか。どちらかが駆逐されるのか。まだまだ時間がかかりそうですが、見続けていきたいと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。