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クレジットカードは何を持っていますか?、と尋ねられた場合、「JALカード」「ANAカード」「JCBカード」「ビザカード」などと答えると思います。しかし、JCBマークの付いたJALカードもあれば、VISA(ビザ)マークの付いたANAカードもあります。最近では少なくなりましたが、レジで出すカードを間違えると「このカードを使えません」と断られることもあります。
この記事では、自分が持っているカードがどの店で使えるのかすっきりさせるために、クレジットカードのブランドについて説明します。
国際ブランドとカードブランド
クレジットカードのブランドについて考える場合には、「国際ブランド」と「発行会社(カードブランド)」は異なるということをまず理解すると簡単です。
国際ブランド
クレジットカードの右下に付いているマークが、そのカードの国際ブランドを表しています。JCB、VISA、Mastercardなどが、国際ブランドです。
現在では、カードが使える店はほとんどこの国際ブランドを単位として契約しています。したがって、店頭やレジの近くにJCBのマークが掲示してあればJCBカード、VISAのマークが掲示してあればVISAカードが使えます。1つのマークだけというケースは珍しく、ほとんどの店では複数のマークを掲示して、複数の国際ブランドが使用できることをうたっています。
カードブランド(発行会社)
また、クレジットカードには、必ずそれを発行した会社があります。自分で作るものでありませんから、当然です。
クレジットカードには、「カードの所有権は発行会社にあり、会員にはカードを貸しているだけである」という記載があります(ない場合もありますが、書いていないだけです)。
所有権を持っているのが、発行会社です。三菱UFJニコス株式会社や株式会社クレディセゾンなどが、発行会社にあたります。
発行会社は、複数の国際ブランドと契約し、自社のカードを国際ブランドごとに発行することが一般的です。カードを作成するときに、まず国際ブランドを選択するのはそのためです。
さらに、国際ブランドとは別に、カードブランドもあります。「DCカード」「セゾンカード」などがカードブランドです。かつては、1つの発行会社が1つのカードブランドを持っていたのですが、発行会社の合併や吸収などが繰り返された結果、複数のカードブランを持つ会社も増えてきました。
例えば、三菱UFJニコスには「MUFGカード」「DCカード」「NICOSカード」、クレディセゾンには「セゾンカード」「UCカード」というカードブランドがあります。とはいえ、カードブランドはカード発行会社とイコールであると考えて間違いありません。
混同されやすい
国際ブランドとカードブランドの関係がわかりにくいのは、両方を兼ねた会社があったり、店頭でごっちゃ混ぜに扱われている場合があるからです。
次の画像は、コンビニのローソンの入り口に貼られていたものです。
利用できるクレジットカードの一覧ですが、国際ブランドとカードブランドが同一に扱われています。上の画像では、左上から右に向かって7つ目(UnionPay 銀聯)までが国際ブランド、8番目(d CARD)以降がカードブランドです。
いろいろと歴史的な経緯があってこうなっているのですが、現在では国際ブランドの付いていないカードはほぼありません。国際ブランドさえ掲示しておけば、どのカードがその店で使えるかわかります。
次の画像は、コンビニのミニストップのものです。さきほどのものよりはすっきりしていますが、これでも左上の「AEON」と左下「OMC」はカードブランドです。どちらのカードブランドもミニストップが属するイオングループとの関係が深いため、外せないようです。
国際ブランド一覧
国内でクレジットカードの国際ブランドと言う場合、次の5種類が挙がります。クレジットカードの五大ブランドと言うことが多いようです。
- JCB
- VISA
- Mastercard
- アメリカン・エキスプレス
- ダイナースクラブ
しかし、(ちょっと乱暴な言い方になりますが、)海外でクレジットカードの国際ブランドと言う場合は、「JCB」が外れ、代わりに「Discover」が入ります。
以前は、国内で「Discover」のマークを見ることはまったくありません。そのため「Discover」というクレジットカードがあることを知らない方がほとんどでしたが、訪日客の増加に伴い、最近ではマークをふつうに見かけるようになりました。だからといって、知名度が上がったわけではないようです。
このところ、中国から世界各国への旅行者の急速な増加に伴い、中国の「銀聯カード」のマークを見ることも多くなってきました。かつて「JCBカード」がたどった道と同じです。いまのところ「銀聯カード」を国際ブランドの一角であるという認定するケースは多くありませんが、いずれ国際ブランドとして一般的になりそうです。
JCBはもちろん、Discoverと銀聯カードまで、すべてまとめて七大ブランドという言い方もあります。さきほどのローソンの画像でもそうでしたが、店頭の表示ではこの七大ブランドすべて揃っているケースが多くなりました。
JCB
株式会社ジェーシービー(と、そのグループ会社。以下、JCB本体)が発行するカードです。「じぇーしーびー」と読みます。
国際ブランドの中で唯一、日本発祥です。
JCBは国際ブランドであるとともに、カードの発行会社でもあります。したがって、JCBは国際ブランドであるとともに、カードブランドでもあります。
JCBカードには、発行会社であるJCB本体が発行したものと、他社が発行したカードにJCBのマークが付いたものがあります。
前者を「プロパーカード」、後者を「開放カード」といいます。プロパーカードに付いているJCBは国際ブランドでありカードブランドでもあります。これに対して、例えばJCBマークの付いたセゾンカードでは、「セゾン」がカードブランド、「JCB」が国際ブランドになります。
かつては、開放カードではJCB本体が提供するサービスが使えないなどの差別化がありましたが、持っている人には関係のない話なのでだんだんと解消され、いまではほとんど差はなくなっています。
そのためか、最近では「JCBオリジナルシリーズ」というJCB本体発行であることを強調したカードも発行されています。
JCBのサイトによれば(2018.3.9時点)、
発行国・地域 | 23 |
会員数 | 1億500万人以上 |
加盟店数 | 3,300万件以上 |
だそうです。
はじめにも書きましたが、日本で国際ブランドという場合はJCBを含みますが、残念ながら海外では含みません。
空港やホテルなど、日本人旅行者がよく訪れるところでは使えますが、一歩街に出ると使えないケースのほうが多いようです。
海外と一口にくくっても、当然、地域によって状況は異なります。韓国、台湾、香港などと、もっと遠方の地域では異なりますが、私の経験としては総じて使えない、という印象です。私がマイナーなところばかり訪れているからであるという事情はあるかもしれません。
しかし、JCBもがんばっているようで、下の画像はドイツの田舎町(失礼)にあった公衆電話です。JCBのマークもしっかりと付いていました。
VISA
Visa International Service Association(以下、ビザ・インターナショナル)が管理する決済システムです。「びざ」と読みます。
ビザ・インターナショナルはカードを発行していません。VISAカードには、必ず別に発行会社があります。したがって、VISAというカードブランドはありません。
発行会社にも、ビザインターナショナルと直接契約しているところと、契約している会社から二次的にライセンスを供与されているところの2つのパターンがありますが、利用者には関係ありません。
かつて(古い話で恐縮です)、「住友カード=VISA」という時代がありました。いまでも「三井住友ビザカード」というフレーズのコマーシャルにその名残りがあります。三井住友カードはMastercardの付いたカードも発行していますが、やはりVISAメインで展開しています。住友カード(当時)がビザ・インターナショナルと独占的(?)に契約し、日本でのVISAカードの普及に努めたため、こういうイメージができあがりました。しかし、現在では多くの発行会社からVISAカードが発行されています。
VJA(全国の主な銀行・金融機関系カード会社等で構成するVisaカード発行企業のアソシエーション)のサイトによれば(2018.3.9時点)、
会員数 | 世界で31億人(2016年12月末時点) |
売上高 | 8.9兆米ドル(年間売上:2016年12月末時点) |
だそうです。
国内はもちろん、世界中どこでも、クレジットカードが使えるところであれば大丈夫です。もし、クレジットカードを1枚だけ持つのであれば、このVISAかMastercardのマークの付いたものをおすすめします。
Mastercard
Mastercardが管理する決済システムです。「ますたーかーど」と読みます。
Mastercardはカードを発行していません。Mastercardには、必ず別に発行会社があります。したがって、Mastercardというカードブランドはありません。
「お金で買えない価値がある。買えるものはマスターカードで。」というコマーシャルをご存知の方も多いでしょう。
かつて、海外ではVISAが優勢だが、国内ではMastercardが優勢であるという時代がありました。三菱銀行(当時)をはじめ、国内の多くの銀行がMastercard陣営だったためです。しかし、現在では国内でもVISAが優勢になっています。そうはいっても、国内、海外とも、使い勝手に大きな違いはありません。
Mastercardのサイトによれば(2018.3.9時点)、
加盟店ネットワーク | 世界210を超える国や地域 |
カード保有者 | 15億人 |
だそうです。
国内はもちろん、世界中どこでも、クレジットカードが使えるところであれば大丈夫です。もし、クレジットカードを1枚だけ持つのであれば、このMastercardかVISAのマークの付いたものをおすすめします。
アメリカン・エキスプレス
アメリカン・エキスプレス・インターナショナルが発行するカードです。略称は「アメックス」。
アメックスはカードの発行会社であり、国際ブランドでもあります。したがって、アメックスは国際ブランドであるとともに、カードブランドでもあります。
アメックスカードには、発行会社であるアメックス本体が発行したものと、他社が発行したカードにアメックスのマークが付いたものがあります。
前者を「プロパーカード」、後者を「開放カード」といいますが、JCBの場合と異なり、あまりこの表現は聞きません。とはいえ、プロパーカードに付いているアメックスは国際ブランドでありカードブランドでもあります。
他社のカード、例えばセゾンカードにアメックスのマークが付いているものは「セゾン・アメリカン・エキスプレス・カード」、JALカードにアメックスのマークが付いているものは「JAL・アメリカン・エキスプレス・カード」で、前者はセゾンカードの発行、後者はJALカードと三菱UFJニコスの発行です。アメックスマークの付いたセゾンカードでは、「セゾン」がカードブランド、「アメックス」が国際ブランドになります。
人にもよるでしょうが、単にアメックスカードという場合、セゾンカードやJALカードは含みません。
他社発行のカードにアメックスのマークが付いたものは、原則として、アメックスのサービスの対象外です。アメックスは、もともと旅行業者です。さらにさかのぼれば運送会社ですが、それはもはや単なる歴史です。かつては、トラベラーズチェックの発行でも有名でした。旅行会社だったため、世界中でのトラベルサービスに定評があります。私も、かつてハワイ島で急に当日1泊だけ宿泊が必要になったことがありましたが、電話するだけでその日の宿を手配してもらい助かりました。
他社発行のカードではこのようなトラベルサービスは受けられません。例外的にいくつかのサービスが受けられるカードもありますが、大したことはありません。
ダイナースクラブ
現在、日本では三井住友トラストクラブ株式会社が発行するカードです。略称は「ダイナース」。
ダイナースクラブはカードの発行会社であり、国際ブランドでもありますが、他社のカードにダイナースのマークを付けたカードはありません。
ダイナースクラブカードと提携カードという区分けがありますが、提携カードもダイナース発行のため、すべてプロパーカードです。
五大ブランドの中ではもっともシェアが低いため、なかなか大変なようで、MastercardやDiscoverとの提携や提携解消など、いろいろと紆余曲折があります。日本でも、2015年に経営元がシティカードジャパン株式会社から三井住友信託銀行株式会社に変わりました。
世界最初のクレジットカードとして有名です。創業者がレストランで会計時に財布を忘れていたことに気づいて困ったことからクレジットカードのシステムをはじめた、という話がダイナースのサイトにも載っていますが、どうやら宣伝のためにあとから作られた話のようです。
日本で発行されるカードには、表ではなく裏側にDiscoverのマークがあります。ダイナースに問い合わせてみましたが「すべてではありませんが、国内・海外のDiscover加盟店で使用できます」とのことでした(2018.3.9時点)。
Discover
アメリカのDiscover Financial Servicesが発行しているカードです。国内では発行されていません。「でぃすかばー」と読みます。
日本ではJCBと提携しています。JCBが使える店であればDiscoverも使えるはずですが、実際に使用できるかどうかについては店側が判断しますので、使えないケースも多いようです。
むしろ、国内でもDiscoverマークを掲示している店を見かけることが増えてきました。国内では発行していないブランドですので、訪日外国人向けでしょう。
下の画像は、コンビニのセブンイレブンに掲示してあったものです。Discoverのマークもあります(3段目中央)。
銀聯(UnionPay)
中国銀聯が発行するカードです。「ぎんれん」と読みます。日本でも、複数の発行会社から発行されています。
銀聯国際(中国銀聯の国際業務を取扱う子会社)のサイトによると、「42の国と地域で発行され、168の国と地域で利用され」ていて、「世界一の発行枚数を誇る」とのことです。さすが、中国発祥のカードです。
中国ではクレジットカードではなく、デビットカードとしての利用がメインですが、使い方は同じです。デビットカードの場合は、すぐに銀行口座から利用額が引き落とされるという点がクレジットカードとは異なります。
下の画像は、コンビニのファミリーマートに掲示してあったものです。銀聯カードのマークもあります(左下)。
国内で発行しているといっても持っている人は多くはないでしょう。訪日外国人、それもおもに中国人の利用を想定しているのは間違いありません。
おわりに
アメリカのNILSON REPORTによれば、2015年の世界でのクレジットカードのシェアは、次のとおりです。
Visa | 44.10% |
Mastercard | 29.00% |
銀聯(UnionPay) | 15.00% |
アメリカン・エキスプレス | 7.10% |
JCB | 2.70% |
ダイナースクラブ/Discover | 2.20% |
出典:https://nilsonreport.com/publication_special_chart.php
Visaがトップであり、VisaとMastecardだけで7割以上を占めています。また、ダイナースクラブとDiscoverが同じブランドとして扱われていることもわかります。
五大ブランドのカードを実際にアメリカで使用し、換算レート、つまり日本円での請求額がどの程度異なるか調べた記事(5大ブランドのクレジットカードの為替レートを比較してみました)があります。あわせてお読みください。
最後までお読みいただきありがとうございました。