路面電車の専門誌があることをご存知ですか?(イカロス出版「路面電車EX」)

vol.14表紙 2-9.よもやま話
この記事は約10分で読めます。

最終更新日 2020年5月21日

路面電車には専門誌があります。おどろく人と、そりゃあるだろうと思う人に分かれるでしょうが、あります。
イカロス出版から刊行されている「路面電車EX」というシリーズです。「路面電車を考え、そして楽しむ総合専門誌」とのことです。
大変面白い専門誌ですので、これまでに刊行された「路面電車EX」シリーズの全号について解説します。

vol.14が発売されましたので、それに合わせて内容を追加しました(2019.11.25)。

第1号(vol.01)は2013年4月に発行されました。それからほぼ半年に1回のペースで続き、2019年11月で第14号(vol.14)まで来ました。現時点(2019.11.25)での最新刊は14号です。次号15号(vol.15)は、2020年5月に発売されると思います(新型コロナウィルスの影響だと思いますが、5月には発売されないようです。気長に待ちましょう)。

豊富なカラー写真と、突っ込んだ内容の記事で、詳しいマニアでも、そうでない人でも楽しめる内容になっています。

各巻の特集

vol.01からvol.14まで、各巻で取り上げられた特集について説明します。

vol.01(特集:日本の路面電車の現状と将来性)

創刊号らしく、特集は日本の路面電車のいまとこれからの課題です。「1970年代に大都市圏では息の根を止められた路面電車も、いまや環境に優しく、人にも優しい新世代の公共交通として復権しつつある。」と書かれています。海外の場合とは異なり、日本の現状は「復権しつつある」とまでは言いがたいものがありますが、その方向に進んでほしいという願いも込められた特集になっています。

北の札幌市交通局から南の鹿児島市交通局まで、現存する19の路面電車について、それぞれ独立したページを設けて、歴史から現状、将来展望までまとめられています。

vol.02(特集:福井鉄道の挑戦)

路面電車(福井鉄道)と通常の鉄道(えちぜん鉄道)の乗り入れなど、何かと話題の多い福井鉄道を特集しています。1914年開通の歴史から始まって、お定まりの廃止論議、2001年の正面衝突事故など、楽しい話だけでなく、負の話題も多くあります。それでも、新型車両「FUKURAM」の導入などがんばっている様子がまとめられています。

福井鉄道については、このブログでも紹介しています。

路面電車:福鉄電車の乗り方
福井県の福井市・鯖江市・越前市を走る路面電車に「福井鉄道福武線(福鉄電車)」があります。 越前市の「越前武生」停留所から福井市の「田原町」停留所までの本線と、途中の「市役所前」停留所から分岐して「福井駅」停留所に向かう支線(通称・ヒゲ線)があります。 運賃の支払方法や、どこの扉から乗るかなど、福鉄電車の乗り方について説明します。

vol.03(特集:リトルダンサーと日本の超低床車)

リトルダンサーとは、国産の路面電車用車両の名前で、最近はやりの低床車です。低床の車両は圧倒的に海外のメーカーが強いのですが、国内のメーカー「アルナ車両」が製造し、国内のあちこちを走っています。「タイプA3・A5」「タイプS」「タイプL」など、各事業者の求めに応じたさまざまなタイプがあります。

次の画像は、松山の伊予鉄市内線の車内にあったプレートです。「ALNA Sharyo」となっています。

製造プレート「ALNA Sharyo」

このほか、「新潟トランシス」「近畿車輌・三菱重工」の車両も取り上げ、国産の低床車を網羅した、さすが専門誌というディープな特集です。

次の画像は、広島電鉄の車内にあったプレートです。「近畿車輌・三菱重工・東洋電機」となっています。

製造プレート「近畿車輌・三菱重工・東洋電機」

vol.04(特集:とさでん交通スタート)

2号前の福井鉄道とは異なり、良くも悪くも大きな話題のない高知の「とさでん交通」ですが、県内の公共交通機関を再編成する形で新会社として再出発しました。これを契機とした特集です。

今回の新会社発足の経緯についてはもちろん、歴史、路線、車両、今後の展望と、高知の路面電車のすべてがわかる内容になっています。

とさでんについては、このブログでも紹介しています。

路面電車:とさでんの乗り方
四国の高知県を走る路面電車に「とさでん」があります。高知市を中心に、東は「南国市」、西は「いの町」をつないでいます。 運賃の支払方法や、どこの扉から乗るかなど、とさでんの乗り方について説明します。

vol.05(特集:富山市内電車の一世紀)

「北陸新幹線開業でますます近くなる富山!」という副題が付いています。富山市には、路面電車の富山地鉄が走っています(富山ライトレールもありましたが、2020年春に富山地鉄に吸収されました)。最近の成功例として、よく知られています。北陸新幹線が金沢まで延伸されたことで、富山にも行きやすくなりました。富山駅も改造され、駅の直下に路面電車が乗り入れるなど、さらに便利になっています。タイトルに「一世紀」とあるように、これまでとこれからを見据えた特集です。

このブログでも富山については、いろいろと取り上げています。あわせてお読みください。

路面電車:富山地鉄市内電車の乗り方
「富山地方鉄道市内電車(地鉄市内電車)」は、富山市内を走る路面電車です。以前は、「地鉄市内電車」と「富山ライトレール」に分かれていましたが、現在は1社に統一されました。 運賃の支払方法や、どこの扉から乗るかなど、地鉄市内電車の乗り方について説明します。
富山:大手モールフェス(トランジットモール社会実験)は大盛況でした!
最終更新日 2020年3月12日2020年3月21日(土)に予定されていました富山駅路面電車南北接続開業記念「WORLDKITCHEN~トランジットモール~」は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い中止となりました。2017年10月に富山市の中...

vol.06(特集:長崎電気軌道100周年)

前号が「一世紀」で今号が「100周年」です。国内を走る路面電車は、すべて1970年代を中心とした廃止の危機を乗り越えてきて、軒並み100年以上の歴史を続けています。長崎電気軌道も、この号が発売された月(2015年10月)の翌月に100周年を迎えました。昔の写真もふんだんに掲載され、特に歴史に重点を置いた特集になっています。

長崎電気軌道については、このブログでも紹介しています。

路面電車:長崎電気軌道の乗り方
長崎市を走る路面電車に「長崎電気軌道(長崎市電)」があります。九州で唯一、民間企業が運営する民営の路面電車です。 運賃の支払方法や、どこの扉から乗るかなど、長崎電気軌道の乗り方について説明します。

vol.07(特集:都電荒川線いまむかし)

都電の中で唯一廃止を免れた荒川線の特集です。「ひとりぼっちの都電の歴史と車両を振り返る」という副題が付いていますが、表紙に書かれた字が小さいのが、なんとなく郷愁をそそります。「歴史編」「車両編」に分かれ、旧型から最新型までの車両についての説明も豊富です。「都電の運転について」「ぶらり都電に乗り歩き」などのお役立ち情報もあります。

都電荒川線については、このブログでも紹介しています。

路面電車:都電荒川線の乗り方
かつて東京23区内を縦横に走っていた都電の中で、唯一現在も残っているのが都電荒川線(愛称:東京さくらトラム)です。 運賃の支払方法や、どこの扉から乗るかなど、都電荒川線の乗り方について説明します。

vol.08(特集:日本のLRVのあゆみとこれから)

LRVとは、Light Rail Vehicleの略で、路面電車用に開発された新型の車両を指します。低床であることが大きな特長ですが、低床車ではないLRVもあります。LRT(Light Rail Transit)のほうが耳慣れていると思いますが、LRTはシステム全体を指します。よく混同されるのでお気をつけください。

「国内LRVのあゆみ」「現場ドキュメント」など、豊富な知識と綿密な取材で、最新のLRV事情についてこれだけ詳しく解説されたものは他にありません。

vol.09(特集:広島電鉄)

特集名は「広島電鉄」です。国内最大の路線網がある事業者です。陳腐な表現ですが、満を持して登場という感じがします。「日本のLRTを牽引するリーディングカンパニーの実像に迫る」という副題が付いています。「街づくり」「歴史」「車両」という内容で構成され、路面電車が広島の街づくりを担っていることがわかります。

広島電鉄については、このブログでも紹介しています。

路面電車:広島電鉄の乗り方
広島市を走る路面電車に「広島電鉄(広島市電)」があります。日本最長の路面電車網があり、JR広島駅と、日本三景のひとつである安芸の宮島や、広島港などを広範囲に結んでいます。 運賃の支払方法や、どこの扉から乗るかなど、広島電鉄の乗り方について説明します。

vol.10(特集:新潟トランシス)

1997年に日本で初めて熊本市電に導入された超低床のLRVは、新潟トランシス(当時は新潟鐵工所)製でした。当時、大きな話題(?)になったことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。
もうすぐ新しいLRTの建設が始まる宇都宮でも、車両は新潟トランシス製になることが決まっています。この新潟トランシスについて、事業内容や歴史など、営業所長の方などへのインタビューも交えて紹介されています。単独のメーカーの特集は初めてです。

次の画像は、熊本市電の車内にあったプレートです。「NIIGATA」となっています。

製造プレート「NIIGATA」

vol.11(特集:日本の路面事業者、5年目の総点検)

創刊から5年経ちました。それでタイトルが「5年目の総点検」です。国内で路面電車を運行している事業者をすべて取り上げて、現状を説明しています。「この5年をひとことで言うと!」という案内文が秀逸ですので、すべて紹介します。

札幌市電 ループ化を実現して市電再認識のきっかけに
函館市電 新幹線効果により観光客で賑わう
東京都電 車両の新世代化が完了し新たな時代へ
東急世田谷線 大きな変化がなく、それが日常の足の証し
豊鉄市内線 イベント電車などで市民に愛される
富山地鉄・富山ライトレール 富山駅直下への乗り入れが実現するも道半ば
万葉線 北陸新幹線の開業で少し停滞気味
福井鉄道 トラムトレインを実現し、新たな需要を発掘
京阪大津線 車両配色や駅名が変わり観光客に優しく
嵐電 超積極策を矢継ぎ早に実施し活性化
阪堺電気軌道 堺市の補助が奏功し、経営が安定
岡山電気軌道 これからの5年で急速に変わる予感
広島電鉄 利用しやすさを目指して積極投資を継続
伊予鉄市内線 オレンジ化が進行し、愛媛の個性を具現化
とさでん交通 組織が変わり、より乗客に沿った事業者に
長崎電気軌道 脱線問題を乗り越え信頼回復へ
熊本市電 地震を乗り越えて躍進ののろし
鹿児島市電 車庫の移転で近代化され、さらに延伸計画も

vol.12(特集:札幌の路面電車100年)

2018年の8月に100周年を迎えた札幌市電の特集です。100周年といってもノスタルジックな話題だけではなく、札幌駅までの延伸計画や新しい形式の車両の投入など、攻めの内容についても切り込んでいます。

札幌市電については、このブログでも紹介しています。

路面電車:札幌市電の乗り方
北海道の札幌には、路面電車の「札幌市電」が走っています。冬が近づくと、ササラ電車という除雪車が必ずニュースになります。 運賃の支払方法や、どこの扉から乗るかなど、札幌市電の乗り方について説明します。

vol.13(特集:令和を迎えた戦前派車両たち)

改元で年号が変わりました。タイトルに令和とありますが、内容は戦前に作られた車両の話です。阪堺電気軌道、広島電鉄、長崎電気軌道の3社で、現在も計11両が現役で活躍しているそうです。貴重な写真とともに紹介されています。

vol.14(特集:東京オリンピックのころの都電散歩)

2度目の東京オリンピックまで半年余りになりました。前回の東京オリンピックのころ、東京の公共交通機関の主役の1人は「都電」でした。当時の都電の様子について、豊富な写真とともに紹介されています。

現在の都電については、このブログでも紹介しています。

路面電車:都電荒川線の乗り方
かつて東京23区内を縦横に走っていた都電の中で、唯一現在も残っているのが都電荒川線(愛称:東京さくらトラム)です。 運賃の支払方法や、どこの扉から乗るかなど、都電荒川線の乗り方について説明します。

連載記事と単発記事

特集だけでなく、連載や単発の記事も充実しています。

例えば、次のようなシリーズがあります(休載の号もありますので、ご注意ください)。

  • 女性運転士・アテンダント奮戦記
  • 懐かしの路面電車探訪
  • 全停留所乗り歩きマップ
  • 海外LRT事情
  • 近未来のLRT

特に「近未来のLRT」では、建設が予定されている宇都宮地区のLRTについて毎号(vol.02、14を除く)取り上げ、最新情報を紹介しています。現在進行形の話題なので、新鮮な情報に接することができます。

単発の記事では、例えば、vol.10に「ストラスブールに国境を越えるトラムが誕生!」などがあり、こちらも最新の情報です。

芳賀・宇都宮LRT建設計画
栃木県の県庁所在都市である宇都宮市と隣接する芳賀町で、路面電車(LRT)を新規に敷設する工事が進んでいます。開業予定は、来年(2023年)8月です。公募で決まった車両の愛称は「ライトライン」です。2022年9月に見てきましたのでご報告します...
路面電車:ストラスブール・トラムについて
最終更新日 2019年1月6日フランスのストラスブール(Strasbourg)の路面電車といえば、車両だけでなく都市空間を含めた先進的なデザインで有名です。乗ってきたので、紹介します。

おわりに

路面電車には根強いファンがいらっしゃるようで、順調に刊行され、vol.14まできました。
私(ブログの筆者)は鉄道ファンでも路面電車マニアでもありません(トランジットモール評論家です)が、そんな人間でも楽しく読める内容になっています。
路面電車に興味のある方は、お読みになることをおすすめします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

スポンサーリンク